〔検査目的〕当院での心臓精査により、主たる病態は重度の心臓弁膜症に伴う重篤な僧帽弁逆流と判断済。定期検査2回目(前回検査1ヶ月前)
〔検査内容〕心エコー検査(カラードップラー心臓超音波検査)
〔投薬内容〕塩酸ベナゼプリル・ジギタリス・トラセミド・スピロノラクトン・硝酸イソソルビド、他、ウルソデオキシコール酸
〔検査結果〕・エコー中に不整脈無し、心拍数100bpm前後
・重篤なMRを認める(逆流は肺静脈内に到達)、中等度のTRを認める(逆流は線状で、右房深部到達(±))、ごく軽度のPR、ごく軽度のARを認める
・僧帽弁肥厚(++、疣贅形成+)、プロラプス(+)、弁尖逸脱(−)
・三尖弁肥厚(±)、弁閉鎖位置は弁輪レベル
・LA:AO=1.58〜1.80:1.00(軽度の左房拡大、同程度)、肺静脈拡大=11.4mm(縮小)、左心耳拡大軽度(+)。右房拡大(−)、後大静脈拡大(−)
・LV-fanc:FS=51〜54%前後、LVPw:RVw=2:1
・左室遠心性拡大(++)、右室形態ほぼ正常、LVIDd=25〜27mm(縮小)
・MV-フロー:Ew=98cm/sec、DT=120ms、EFスロープ先鋭化・平坦化(−)、 Aw=108cm/sec 、E/A=0.91、等容積拡張時間=90ms、MRフロー=567cm/sec(前回より上昇)
・TVフロー:Ew=36cm/sec、Aw=33cm/sec、TRフロー計測困難
・LVOTフロー:AOv=60cm/sec(不正確)、PEP=36ms、ET=156ms、PEP/ET=0.23
・RVOTフロー:PAv=45cm/sec、PEP=42ms、ET=277ms、PEP/ET=0.15、加速時間=120ms、減速時間=156ms
・PA:AO=1:1
重度の心臓弁膜症に伴う重篤な僧帽弁逆流(MR)、中等度の三尖弁逆流(TR)
・左房圧は低下、左心系容量負荷は前回より減少、左室拡張性が低下
弁膜症は重度であり、これに伴って重篤なレベルのMRがみられる。TRは中等度である。これらの病態は前回検査と比較して著変は認められない。心拍数が前回より大幅に低下して認められる。僧帽弁口部フローは前回より低下して認められる。肺静脈は拡張しているが、前回より軽減して認められる。さらに左心室の遠心性拡大も軽減して認められる。これらの所見から容量負荷上昇が軽減していると考えらる。MR流速が上昇しており、左房圧の低下が示唆される。前回検査結果と比較して概ね良好な結果が得られたが、左室拡張性のみ悪化を示す結
果が認められる。この病態について今後の変動に注意を要する。大動脈流速は明らかに低下しており、左室拍出不全が示唆されるが、確定的な判断には至らない。真の拍出低下であるとすると、心不全は不全期と判定されるが、その他の情報を考慮すると代償期と考える。心不全の重症度はISACHC クラス1bと判定される。検査結果と全身状態が良好であるため、内服は現状(ジゴキシン、トラセミド、スピロノラクトン、硝酸イソソルビド、ACE-I)の維持が適当と考える。
# 僧帽弁閉鎖不全症
2011.03.10 Thursday